診療支援
診断

オウム病
††
Psittacosis
石田 直
(倉敷中央病院・呼吸器内科主任部長)

診断のポイント

【1】トリとの接触の聴取が最も重要である。飼育鳥が死亡している場合には特に疑いが強くなる。

【2】軽症例から,肺炎を発症し播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)や急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS),多臓器不全を合併する重症例までがみられる。

【3】非定型肺炎を疑う所見(白血球数正常,膿性痰欠如,β-ラクタム系抗菌薬無効など)がみられる。

緊急対応の判断基準

【1】肺炎としての重症例:入院や専門施設への移送を検討する。具体的には,患者年齢ならびに脱水,呼吸不全,意識障害,血圧低下の有無を総合して判断する。

【2】DICが疑われる場合:専門医のいる施設に移送が望ましい。

症候の診かた

【1】トリの排泄物に含まれる病原体を吸入して5~14日間の潜伏期間を経て,発熱,乾性咳嗽,頭痛,全身倦怠,筋肉痛,関節痛などのインフルエンザ様症状で発症する。

【2】比較的徐脈や肝脾腫を呈することが多い。

【3】肺炎例では,非定型肺炎の病像をとる。

検査所見とその読みかた

【1】細胞内のみで増殖する偏性細胞内寄生菌であり,培養同定は困難である。

【2】末梢血白血球数は正常か,軽度増加し,左方移動がみられることが多い

【3】肝酵素の上昇,低アルブミン血症,低ナトリウム血症がしばしば認められる。

【4】胸部X線所見は,区域性の陰影やすりガラス様陰影,網状影がみられることが多いが,時に大葉性肺炎様の濃厚な浸潤影をとることもある(図1)。

確定診断の決め手

【1】トリとの接触歴

❶血清診断が主体となる。補体結合反応(CF)は属特異性であるため,種特異的なmicro-IF法が用いられることが多い。

❷ペア血清で4倍以上のIgG抗体上昇またはシングル血清でIgM抗体上昇の場合に有意とされる。

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