診断のポイント
【1】1週間以上の咳嗽があり,百日咳に特徴的な以下の4つの咳嗽症状のうち,1つ以上伴う場合を臨床的百日咳としている(表1図)。
❶吸気性笛声。
❷発作性の連続性の咳込み。
❸咳嗽後の嘔吐。
❹チアノーゼの有無は問わない無呼吸発作。
症候の診かた
【1】典型例は感染後1~2週間の潜伏期後にカタル期(1~2週間),痙咳期(4~8週間),回復期(1~2週間)の経過をたどる。
【2】カタル期は感冒様症状を呈し,通常の感冒と鑑別ができないが,痙咳期になると百日咳に特徴的なスタカート(staccato)とよばれる発作性,連続性の咳嗽と,咳嗽の合間に吸気時の笛声音(whoop)を認め,これが繰り返される(レプリーゼ;reprise)。
【3】成人例では発作性の咳嗽は高頻度にみられるが,whooping coughの頻度は少ない。
【4】咳嗽は夜間に強く,嘔吐を伴うこともある。
検査所見とその読みかた
【1】小児と異なり白血球数が正常でリンパ球比率の上昇を示す症例は少ない。
【2】これまで抗百日咳毒素抗体(PT-IgG)抗体価が「100EU/mL以上」の場合を確定診断としてきたが,健常成人でも基準を満たす症例が5~10%存在するため確定診断とはならない(図1図)。
【3】IgM,IgA抗体がいずれか陽性の場合は百日咳の可能性が高い(図1図)。
確定診断の決め手
【1】百日咳の分離あるいはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法またはLAMP法において陽性の場合(図1図)。
【2】PT-IgG抗体価がペア血清で2倍以上の上昇の場合(図1図)。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】咳喘息・喘息
❶喘息の既往。
❷アレルギー性鼻炎の既往。
❸身体診察所見。
❹末梢血好酸球数。
❺呼気NO値。
❻咳嗽の季節性,好発時間,誘発因子。
【2】マイコプラズマ感染症:迅速抗原検査。
治療法ワンポイント・メモ
【1】抗菌薬はカタル期に有効で,痙咳期や
関連リンク
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/6 百日咳
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/鼠咬症
- 臨床検査データブック 2023-2024/百日咳菌抗原定性 [保] 217点
- 臨床検査データブック 2023-2024/ヒトメタニューモウイルス抗原〔hMPV抗原〕 [保] 142点
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- 臨床検査データブック 2023-2024/レジオネラ症(在郷軍人病)
- 新臨床内科学 第10版/2 レプトスピラ症(ワイル病)
- 新臨床内科学 第10版/5 回帰熱
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