診療支援
診断

境界性パーソナリティ障害(BPD)
Borderline Personality Disorder
白波瀬 丈一郎
(慶應義塾大学特任准教授・精神・神経科学)

診断のポイント

 診断基準を表1に示す。

【1】女性:75%が女性である。

【2】不安定で激しい対人関係。

【3】長期にわたり持続する,感情の不安定さ。

【4】反復する自傷行為,自殺企図。

【5】小児期の外傷的な生活歴。

症候の診かた

【1】症状の浮動性

❶不安,恐怖,抑うつ,強迫などさまざまな症状がつぎつぎと表れ変転する。そのため,主たる症状が何かを定めにくい。

❷薬物療法への反応性は低いか,ある程度効果が認められてもその効果は一時的で持続しない。

【2】見捨てられる恐怖

❶他者との別離や拒絶に対して過敏であり,強い恐怖や怒りを示す。

❷そのため,なりふりかまわない手段で別離や拒絶を阻止しようとする。

【3】対人距離の極端な揺れ動き

❶極端に警戒した態度をとっているかと思うと,いきなり相手を理想化して急速に接近してきたりする。

❷しかし,ささいなことで欲求が満たされないと感じた途端,激高し辛辣な嫌味をいうなどの攻撃に転じる。その揺れ動きは唐突で揺れ幅が大きい。

❸こうした揺れ動きは,さまざまな対人関係場面で認められ,医療従事者との間でも同様に展開する。

【4】同一性の混乱

❶自分自身への嫌悪感のために自己イメージは常に不安定である。あるいは,自己イメージをもてず自分の存在を実感できない場合もある。

❷その代償として,世話や支持を与えてくれる他者や環境の存在を必要とする。

【5】感情の不安定さ

❶強い不快気分,いらだち,不安などがエピソード的に生じる。それらは通常数時間で収まり,数日以上持続することはまれである。

❷基調として不快な気分が常に存在しており,それが怒りやパニック,絶望により増幅され強い不快気分やいらだちとなる。

【6】不適切で激しい怒り

❶世話や支持を与えてくれると思っていた対象から,求めた応答を得られないと,冷たい,何もしてくれない,自分のことを嫌いになったなどと思い,怒りを爆発させる。

❷その怒りはしばし

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