診療支援
診断

社交不安症
Social Anxiety Disorder (SAD)
朝倉 聡
(北海道大学大学院准教授・保健センター/精神医学教室)

 社交不安症は,国際的な疾患分類としては1980年から米国精神医学会(APA)によるDSM-Ⅲに社会恐怖として記載されるようになり,DSM-Ⅳからは社会恐怖(社会不安障害),DSM-5からは社交不安症(社交恐怖)と表記されることになっている。

診断のポイント

【1】他者の注目を浴びる可能性のある社交場面に対する著しい恐怖または不安

【2】あるふるまい,または不安症状をみせることで,否定的な評価を受けることになることを恐れる。

【3】社交的状況は回避するか,強い恐怖や不安を感じながら耐え忍ぶ。

【4】恐怖,不安,または回避による日常生活機能の障害がみられる

【5】公衆の面前で話をしたり動作をしたりすることに恐怖が限定される場合は,パフォーマンス限局型に特定される。

症候の診かた

【1】発症年齢が若年であり,75%の人は8~15歳で発症するとされる。このため,不登校となり学業上困難をきたすことがある。また,学校生活が送れても就業が難しいこともある。

【2】不安や恐怖感の出現あるいは回避の対象となる状況としては,人前での会話や書字,公共の場所での飲食,あまりよく知らない人との面談などが挙げられる。

【3】不安に伴う生理的反応が現れやすく,紅潮,動悸,振戦,声の震え,発汗,胃腸の不快感,下痢などがみられやすい。

【4】不安感を緩和するためにアルコールを使用するようになるとアルコール依存症となったり,経過中うつ病を併発したりすることもある

検査所見とその読みかた

【1】臨床症状評価尺度:Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)が使用されることが多く,LSAS日本語版(LSAS-J)も開発されている。重症度の目安としては,50~70で軽症,70~90で中等症,90以上で重症とされる。

【2】自己記入式の尺度:Social Interaction Anxiety Scale(S

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