診断のポイント
【1】乾燥肌:ドライスキンともよばれる。
【2】慢性の強い瘙痒。
【3】特徴的な皮疹:急性期は漿液性丘疹や鱗屑,慢性期には苔癬化を認めることが多い(図1図)。
【4】特徴的な皮疹の分布:主に前額,眼囲,口囲,口唇,耳介周囲,頸部,肘窩,膝窩,手足首に,左右対称性に分布する。
緊急対応の判断基準
【1】紅皮症:全身の皮膚の発赤を認める。
【2】Kaposi水痘様発疹症または伝染性膿痂疹:発熱など伴う主に顔面に生じる微小びらんを認める。
【3】上記【1】【2】を認める際には,皮膚科専門医がいる病院に移送する。
症候の診かた
【1】乾燥肌
❶乾燥肌によるバリア機能の低下に伴う経皮感作が本疾患の発症に関与している。
❷乾燥肌は,鮫肌様皮膚として確認されやすい。
【2】かゆみと搔爬痕:特に冬期には乾燥した環境によりバリア機能が破壊され,ナイロン製の衣服によりこすれる部位などにかゆみを認めることが多い。
【3】特徴的な皮疹の分布:汗はプロテアーゼなどの刺激性物質を含有するため,汗のたまりやすい肘窩・膝窩などの屈曲部に皮疹が誘発されやすい。
【4】乳幼児期の皮疹:食べ物がこぼれやすい口囲,下顎部に皮疹が生じやすい(図2図)。
【5】皮疹の重症度を評価するものとして日本皮膚科学会の委員会によるアトピー性皮膚炎重症度分類,Severity Scoring of Atopic Dermatitis(SCORAD),Eczema Area and Severity Index(EASI)などがある。
検査所見とその読みかた
アトピー性皮膚炎に特異的な検査結果は存在しないが,以下の検査項目には有用性が認められる。
【1】血清総IgE
❶アトピー性皮膚炎患者の約80%で高値を示す。
❷長期的な重症度や病勢を反映し,皮膚炎の予後不良性と相関する。
【2】血清TARC
❶短期的病勢を鋭敏に反映し,重症度評価の指標として有用である。