診断のポイント
【1】全身の皮膚に多発する弛緩性水疱とびらん形成。
【2】難治性の口腔内びらん,水疱。
【3】抗デスモグレイン1もしくは3抗体が陽性。
緊急対応の判断基準
【1】全身のびらんが多発して,びらん局面が10%以上になり,自宅では処置が困難な場合
❶皮膚科専門医に紹介する。重症例では高用量のステロイド投与が基本治療になる。
❷すでに低用量のステロイド投与が開始されていると,ステロイド増量後の治療反応性が鈍くなることがあるので,専門医に紹介する場合は低用量のステロイド投与をせずにすみやかに紹介する。
【2】食事がとれない場合:早めに皮膚科専門医に紹介する。喉頭から食道粘膜病変を合併している可能性がある。
症候の診かた
【1】全身の水疱(図1図)とびらん:最も頻度が高い症状である。機械的な刺激を受けやすい部位に好発する。健常部位を摩擦すると水疱形成を起こすことがあり(Nikolsky現象),天疱瘡を疑う所見の1つである。
❶水疱の性状が弛緩性で破れやすい場合は,粘膜皮膚型天疱瘡を考える。
❷紅斑の表面に薄い鱗屑や膜様の浅い水疱が,前胸部,背部,顔面に生じる場合は落葉状天疱瘡を考える(図2図)。
【2】粘膜の水疱とびらん
❶口腔粘膜に破れやすい水疱や治りにくいびらんを認める場合は,本症を第一に疑う。
❷口腔内の水疱は破れやすく,診察時には水疱がみられずびらんのみのことが多い。
❸咽頭,喉頭から食道にかけてびらんが生じていると,嚥下時疼痛や浮腫による摂食障害を認めることがある。直腸肛門,鼠径,臍周囲も好発部位である。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査:血清中の抗デスモグレイン1もしくは3抗体が陽性に検出される(化学発光酵素免疫測定法:CLEIA)。
❶粘膜皮膚型天疱瘡:抗デスモグレイン1および3抗体が陽性。
❷粘膜型天疱瘡:抗デスモグレイン3抗体のみが陽性。
❸落葉状天疱瘡:抗デスモグレイン1抗体
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