診療支援
診断

掌蹠膿疱症
Pustulosis Palmaris et Plantaris
杉浦 一充
(藤田医科大学教授・皮膚科学)

診断のポイント

【1】手掌,足底の軽い瘙痒を伴った膿疱,紅斑性角化性局面をみたら本疾患を想起する。手掌,足底以外の皮疹の有無についての確認もする。

【2】真菌鏡検で白癬が陰性であることを確認する。

【3】扁桃腺炎,齲歯,歯周炎などの感染病巣の有無を確認する。

【4】骨関節痛を訴える症例では,胸肋鎖骨関節などのX線写真で病変を確認する。

【5】皮膚生検で病理組織診断をする。

症候の診かた

【1】掌蹠に紅色の小水疱として始まり,短期間のうちに膿疱となり,やがて黄褐色の痂皮となる(図1)。

【2】皮疹は両側が同時に侵される場合と,片側から始まる場合とがある。手掌は母指球,小指球に始まることが多く,また足蹠では足底弓蓋,踵に始まることが多い。時に足縁にも及ぶ。

【3】短期間に生じ,膿疱は無菌性で,個々の膿疱が融合して密集することは通常ない。しかしこれらの皮疹は次々に生じ混在するので,次第に紅斑性,角化性局面を形成することになり,一部では亀裂を生じる。

【4】掌蹠以外にも膝蓋部,下腿伸側,肘頭部に鱗屑を伴う紅斑,水疱,膿疱を生じることがある。

【5】爪床,爪囲に膿疱を生じることもあり,爪の混濁,肥厚,変形をきたすこともある。

【6】軽度の瘙痒を伴う。足蹠は疼痛を伴うこともある。

【7】骨関節炎を約10%の患者に生じる。胸肋鎖骨関節に多い。

【8】原因として病巣感染が疑われる症例がある。病巣感染の割合は10~40%とされ,扁桃,中耳,歯槽,齲歯,副鼻腔,胆囊などがある。

検査所見とその読みかた

【1】病理組織所見

❶初期病変である表皮内の単房性の水疱が特徴的である。単核球と少数の好中球の浸潤がみられる。周囲の表皮は軽度のacanthosisを示す。

❷膿疱からの組織所見では,角層下に単房性の膿疱が認められる。好中球の浸潤が著しい。

【2】血液検査:白血球増多,抗ストレプトリジンO抗体(ASO)の高値,CRP陽性,赤沈の亢

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