診断のポイント
伝染性膿痂疹は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による水疱性膿痂疹と主にA群β溶血性レンサ球菌(GAS:group A Streptococcus)による非水疱性(痂皮性)膿痂疹に大別される。
【1】水疱性膿痂疹:夏季,幼小児に好発。小外傷,搔破部位に初発し,周囲,他部位へ火事の飛び火(俗称とびひ)のように広がる。集団内で接触感染を認める。
【2】非水疱性膿痂疹:季節,年齢を問わず,多くはアトピー性皮膚炎を合併する。厚い痂皮が付いた皮疹で,発熱などの全身症状を伴う。
【3】ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS):幼児に好発。発熱が先行し,口・眼周囲発赤から始まり,次第に間擦部,全身へと熱傷様に表皮角層が剝離する。
症候の診かた
【1】水疱性膿痂疹
❶先行皮膚病変にS. aureusが増殖し発症。
❷まず,紅斑上に小水疱ができ,容易に破れ,びらんとなり痂皮を付着し上皮化する。細菌を含む水疱内容液の接触によって,周囲や遠隔部位に広がる(図1図)。
【2】非水疱性膿痂疹
❶紅斑上に生じた小膿疱からびらん形成,黄褐色の厚い痂皮を付着し(図2図),疼痛を伴う。
❷時に所属リンパ節が有痛性に腫大し,咽頭痛,発熱を伴う。
【3】SSSS
❶全身倦怠感,発熱など全身症状が先行する。
❷口囲,鼻孔周囲,眼囲に発赤,水疱形成で始まる。眼脂著明。口囲に放射状の亀裂,びらん,痂皮が付着する。皮膚の接触痛,潮紅,剝離が見られる(図3図)。摩擦で皮膚は剝離する(Nikolsky現象陽性)。粘膜病変はない。
❸その後,粃糠様ないし膜様落屑を生じ治癒する(2~4週間)。
検査所見とその読みかた
【1】細菌培養・薬剤感受性試験
❶膿痂疹の水疱,膿疱内容液で初診時に施行。同時に塗抹グラム染色で起炎菌を推測(ブドウ房状ならS. aureus,連鎖状ならGAS)。
❷SSSSでは,咽頭,眼脂,鼻孔部,皮疹
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