診断のポイント
【1】後天的に発症する自己免疫性の脱毛症。
【2】牽引試験(pull test)が陽性。
【3】漸減毛(感嘆符毛)と黒点を頭皮に認める。
【4】脱毛部は瘢痕化しない。
症候の診かた
【1】通常型では,境界明瞭な脱毛斑を頭皮に認める(図1図)。
【2】牽引試験:病変部の頭髪を牽引すると容易に抜ける。
【3】漸減毛:病変部の頭皮には,10mm弱で,根元が細くやせ衰えた切断毛を認める(図2図)。
【4】黒点:切断毛が毛孔に詰まっている所見を認める(図2図)。
【5】爪甲に点状の陥凹を認めることがある。
【6】円形の脱毛斑を形成せず,頭皮の生え際に沿って帯状に脱毛する病型(蛇行型)や,頭部全体(全頭部型)または全身(汎発型)で脱毛をきたす病型もある(図3図)。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査
❶円形脱毛症そのものでは,血液検査で特記すべき異常所見を通常認めない。
❷ただし,エリテマトーデスや梅毒による脱毛との鑑別目的で,抗核抗体,梅毒血清反応検査(STS)や梅毒トレポネーマ抗体(TPLA)などの測定を行ったほうがよい。
【2】ダーモスコピー
❶肉眼での観察に比べ,漸減毛と黒点がより明瞭に観察可能である(図2図)。
❷さらに,毛包での炎症を反映して毛孔周囲に軽度の紅斑を認めることもある。
確定診断の決め手
牽引試験が陽性で,病変部に漸減毛と黒点を認めれば円形脱毛症と確定診断する。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】抜毛癖:長短が異なる切断毛を脱毛部に認め,牽引試験は陰性。ダーモスコピーで毛孔周囲の出血点を認める。
【2】エリテマトーデス:脱毛部の紅斑が顕著で,しばしば瘢痕化し毛孔が消失する。
【3】休止期脱毛:牽引試験は陽性だが,抜去した頭髪はすべて正常の休止期毛(棍棒毛)である。
確定診断がつかないとき試みること
特に進行期(脱毛する時期)を過ぎて固定期(発毛が遅延する時期)に陥っている患