診療支援
診断

眼窩腫瘍
††
Orbital Tumor
吉川 洋
(九州大学病院眼科・特任講師)

診断のポイント

 主な徴候は以下である。

【1】眼球突出

【2】眼瞼腫脹,腫瘤触知

【3】眼球運動障害

緊急対応の判断基準

 角膜穿孔や不可逆性視神経障害の可能性があり,以下の場合,緊急の対応が必要である。

【1】眼球突出により閉瞼不能

【2】視機能の著しい低下

症候の診かた

【1】触れる場合は硬さをみる。リンパ腫や炎症性では軟らかいことが多い。

【2】眼球偏位の方向:内下方偏位なら涙腺,上方なら上顎洞から,前方偏位なら球後に腫瘍がある。

【3】眼瞼浮腫や皮膚発赤など炎症所見があれば炎症性かリンパ腫を考える。

検査所見とその読みかた

【1】CT,MRI

❶撮影のポイント

水平断に加え,必ず冠状断,視神経に沿う方向の矢状断も撮影する。

造影しないと必要な情報が得られないことが多い。

❷読影の主なポイント

涙腺部か筋円錐内(血管腫,髄膜腫)か筋円錐外か。

外眼筋(眼窩筋炎)か,眼窩脂肪内(リンパ腫など)か,筋と脂肪にまたがる(IgG4関連疾患など)か。

造影剤で増強されるか,境界明瞭か不明瞭(炎症性)か,骨の菲薄化がある(良性で長期)か骨浸潤がある(悪性)か。

【2】血液検査

❶可溶性IL-2受容体,CRP,免疫グロブリンなどの炎症・リンパ腫関連項目をみる。

❷眼窩部は病変が小さいので正常上限を少し超える程度でも有意ととることが多い。

❸涙腺部や炎症性を考える場合は免疫グロブリン(IgG,IgG4)の検査も行う。

❹悪性上皮性腫瘍で腫瘍マーカーが役立つことは少ない。

確定診断の決め手

【1】画像で類推したのち,生検または腫瘍摘出で病理診断をする。

【2】突然発症する眼窩骨膜下血腫,副鼻腔囊胞,造影剤の漸増性増強を示す海綿状血管腫などは病歴と臨床所見,画像のみで診断できる。

【3】生検困難な眼窩深部の髄膜腫や神経鞘腫も画像診断で暫定診断することがある。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】涙腺腺様囊胞癌

❶眼球の内下方偏位,増悪傾

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