診断のポイント
【1】一側性の閉眼不全,口角下垂など顔面緊張の低下。
【2】安静時よりも顔面表情筋の運動負荷時で左右差が明らか。
【3】患側の味覚異常や流涙低下,耳痛を訴える場合あり。
症候の診かた
【1】顔面運動の障害
❶顔面表情筋の運動時の左右差を,前額部,眼輪部,頰部,口輪部などで比較すると,明らかな左右差を認める。
❷筋緊張や皮膚の動きの状態を詳細に観察する。前額部のみ左右差を認めない場合は,中枢性麻痺を疑う。
❸小児では筋緊張が保たれやすく,左右差がわかりにくい場合がある。
❹顔面の知覚には通常左右差を認めない。
【2】難聴:麻痺側に聴力低下を認めれば,Ramsay Hunt症候群や聴神経腫瘍を疑う。
【3】めまい:Ramsay Hunt症候群ではめまいを主訴とする場合もある。自発眼振や注視眼振を確認する。
【4】鼓膜:耳炎性麻痺では,麻痺側鼓膜に中耳炎や真珠腫の所見を認める。
【5】耳介:帯状疱疹を認めればRamsay Hunt症候群と診断する。疱疹は外耳道入口部や耳甲介腔に多い(図1図)。麻痺発症日から数日前後して,帯状疱疹が出現する場合もある。
【6】耳下部腫脹:麻痺側に腫瘍を触知すれば,耳下腺癌を疑う。
【7】反復性顔面神経麻痺:同側の繰り返す顔面神経麻痺は顔面神経鞘腫を疑う。
検査所見とその読みかた
【1】顔面表情筋スコア:柳原法(40点法)〔「顔面筋の麻痺・けいれん」項(→)の図1図参照〕で,20点以上を軽症,18~12点を中等症,10点以下を重症としている。
【2】誘発筋電図検査(ENoG)
❶顔面神経本幹部を経皮的に閾値上最大レベルで電気刺激し,顔面表情筋から得られた複合筋活動電位(CMAP)の振幅を,左右で比較する検査である。患側CMAP振幅/健側CMAP振幅を百分率(ENoG値)で表記する。
❷ENoG値と残存神経線維数には相関があり,ENoG値が高ければ神経障害は軽い。
【3】神経興