診療支援
診断

腎・膀胱・尿道の損傷
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Trauma and Injuries of the Kidney, Bladder and Urethra
中島 洋介
(川崎市立井田病院泌尿器科・病院長)

 交通事故や労働災害などによる外的損傷と,外科手術・処置や尿道カテーテル挿入時に発生する医原性損傷に分類される(医原性損傷については[さらに知っておくと役立つこと]参照)。以下,より重要な外的損傷について主に述べる。

診断のポイント

【1】腎外傷

❶受傷機転,身体所見,血尿の有無などから存在を疑い,他臓器の合併損傷が多いことに注意。

❷造影マルチスライスCT(以下CT)による画像診断が最も重要で,CT所見を日本外傷学会の腎損傷分類(以下JAST分類,図1)に当てはめて重症度を評価することが,診断および治療方針の決定に有用である。

【2】膀胱外傷

❶受傷機転と身体所見,血尿の有無,尿が出ないなどの症候に注意。

❷挫傷と破裂に分類され後者が重要。膀胱破裂は,破裂形式により腹膜外破裂,腹膜内破裂,腹膜内外破裂に分類される。

腹膜外破裂が最も多く,ほとんど骨盤骨折に伴い発生する。

腹膜内破裂は鈍的外力によって腹腔内圧が急上昇して起こり,膀胱頂部に多く発生する。

❸診断には,膀胱造影あるいはCT膀胱造影が必要である。

【3】尿道外傷

❶会陰部を打撲して損傷する前部尿道損傷(多くは跨り損傷)と,骨盤骨折に伴うより重症な後部尿道損傷に分類され,尿道の部分断裂なのか完全断裂なのかの診断も重要である。

❷受傷機転と外尿道口の血液付着などの身体所見から疑い,逆行性尿道造影が必須である。

❸跨り損傷の場合,会陰部に蝶形皮下出血斑(図2)があれば前部尿道損傷を疑う。

緊急対応の判断基準

 「腎外傷診療ガイドライン2016年版」では,腎外傷の診療に望ましい施設の要件を挙げており,腎外傷に対する経カテーテル動脈塞栓術(trans-catheter arterial embolization:TAE),尿漏ドレナージ,腎摘除などの手術だけでなく,頭部,胸部や腹部などの合併損傷に対しても緊急に対応できる体制が望ましい。

検査所見と

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