診療支援
診断

腎の良性腫瘍
††
Benign Renal Tumor
本郷 文弥
(京都府立医科大学准教授・泌尿器外科)

診断のポイント(表1)

【1】ドックや検診における腹部超音波検査などで偶然発見されることが多い。画像診断では判別が困難であることもある。

【2】臨床において,頻度として高いものとしては血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)とオンコサイトーマ(oncocytoma)が挙げられる。

【3】AML

❶散発性は40~50歳の女性に好発する。多くは単発性である。

❷結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC)の患者では80%でAMLが発生し,散発性より若年者(30歳台)に発生する。

【4】オンコサイトーマ

❶60~70歳に多く,やや男性に多い。

❷組織学的にはミトコンドリアを多く含む好酸性の細胞からなる(図1)。

❸一方,嫌色素型腎細胞癌との合併の報告もあるため,注意が必要である。

症候の診かた

【1】無症状であることが多いが,腹部の圧迫症状を認めることがある。

【2】巨大なAMLでは腫瘤あるいは腫瘍内の動脈瘤の破裂による疼痛,貧血,肉眼的血尿を呈することがある。

検査所見とその読みかた

【1】AML

❶単純CTで脂肪成分を認め(図2),超音波検査では高輝度であることが特徴的である。また,MRIではT1強調画像,T2強調画像ともに高信号を呈することが多い。脂肪抑制法による信号低下により診断が可能なことも多い。

❷ただし,AMLのうち5%は脂肪成分をほとんど含まないことがあり,その場合には腎細胞癌との鑑別が困難である。また,腎細胞癌と異なり偽皮膜を認めないことが特徴とされるが,確定的ではない。

【2】オンコサイトーマ

❶境界明瞭な充実性の腫瘤として認められ(図3),単純CTでは腎実質とほぼ同じ濃度で描出されることが多い。

❷鑑別は造影CTでは腫瘍自体は造影早期に濃染し,排泄相では車軸様の血管や中心性瘢痕が特徴的とされるが,小径(3cm以下)である場合は認められないことも

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