診断のポイント
【1】高齢(診断時の平均年齢は約70歳)。
【2】ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染。
【3】喫煙。
【4】硬化性苔癬。
症候の診かた
【1】外陰部の瘙痒感
❶最も頻度の高い症状であり,臨床像は触知可能な外陰病変である(図1図)。医師が内診時に気付くことも多い。
❷長期にわたる瘙痒の病歴があることが多い。進行するまで受診しないことがある。
【2】病変に壊死または潰瘍化が起こった場合:出血や水様性帯下が生じることがある。
【3】ほかに熱感,痛み,色素沈着や白斑などがある。悪性黒色腫は青みがかった黒い色素沈着で,乳頭状であることも少なくない。
【4】直接進展により尿道,膀胱,腟,会陰,肛門,または直腸などへ浸潤する。進行すると血行性転移やリンパ行性に鼠径リンパ節から骨盤リンパ節および傍大動脈リンパ節へ進展する。
検査所見とその読みかた
【1】コルポスコピー:コルポスコープ(腟拡大鏡)で病変部を拡大し,子宮頸部や腟,肛門周囲に病変が及んでいないかどうか観察する。
【2】生検:確定診断のため,局所麻酔下に病変部の皮膚および皮下組織の一部を採取する。
【3】CT(胸部・腹部),MRI(骨盤部):腫瘍の浸潤の程度,リンパ節や他臓器への転移の有無を調べる。
【4】腫瘍マーカー:外陰癌の約90%は扁平上皮癌であり,組織型が扁平上皮癌であればSCC値を測定する。
確定診断の決め手
生検による病理組織学的診断。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
バルトリン腺囊胞やバルトリン腺膿瘍は日常診療でよく目にするが,まれな疾患であるバルトリン腺癌を誤診しないよう注意する。癌であれば増大傾向を示す。
確定診断がつかないとき試みること
複数箇所の再度の生検。
合併症・続発症の診断
【1】潰瘍を形成すると出血や感染を併発しやすくなる。
【2】尿道へ浸潤すると尿閉をきたす。
予後判定の基準
【1】5年生存率は進行期により異なる(表1図)。