[Ⅰ]胞状奇胎†
診断のポイント
【1】妊娠検査薬陽性。
【2】500~1,000妊娠に1回の頻度で発生する。
【3】経腟超音波検査で子宮内腔に胎囊ではない異常陰影(vesicular pattern)を認める(図1図)。
【4】胞状奇胎の診断は,病理組織診断により行われるため,子宮内容物を必ず病理検査に提出する。
【5】細胞遺伝学的に,雄核発生二倍体である全胞状奇胎と,父2母1のハプロイドを有する三倍体である部分胞状奇胎に分類される。
症候の診かた
【1】正常妊娠と区別可能な症状はない。
【2】周閉経期で妊娠に気が付いていない場合は,消化器症状のため内科などを受診する場合がある。妊娠機会の問診が肝要である。
検査所見とその読みかた
【1】hCG:血清hCGは高値な場合が多い。
【2】経腟超音波検査
❶全胞状奇胎:経腟超音波検査で典型的なエコー像を呈する場合が多いが,非典型像にも注意する(図1図)。
❷部分胞状奇胎:稽留流産との鑑別が難しい場合が多い。
【3】病理組織検査:絨毛栄養膜細胞の異常増殖と間質の浮腫を認める。
確定診断の決め手
子宮内容物の病理組織検査。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】正常妊娠:正常妊娠が否定できない場合は,時間を空けて診察する。
【2】異所性妊娠(→):子宮内に正常妊娠像(胎囊・胎芽・心拍)が確認されない場合には,異所性妊娠を除外する必要がある。
確定診断がつかないとき試みること
【1】全胞状奇胎と部分胞状奇胎の鑑別には,p57KIP2免疫染色が有用である。
【2】母由来染色体を有する部分胞状奇胎では,細胞性栄養膜細胞・間質細胞の核が染色されるが,全胞状奇胎では染色されない。
合併症・続発症の診断
【1】全胞状奇胎の15~20%,部分胞状奇胎の1~2%で続発症(侵入奇胎)を発症する。
【2】子宮内容除去術後に,血清hCG(単位はmIU/mLのもの)を1~2週間隔で測定する(1次管理)。