診療支援
診断

多囊胞性卵巣症候群
Polycystic Ovary Syndrome (PCOS)
苛原 稔
(徳島大学大学院教授・産科婦人科学分野)

診断のポイント

 日本産科婦人科学会の診断基準(2007年,表1)の3項目のすべてを満たすものをPCOSと診断する。以下の項目が満たされれば診断は比較的容易である。

【1】初経から続く月経異常(無月経,希発月経,無排卵周期症)。

【2】超音波断層法により両側卵巣に多囊胞化が認められる。

【3】特有の内分泌検査所見:LH高値かつFSH正常,あるいはアンドロゲン男性ホルモン高値。

症候の診かた

【1】東洋系人種のPCOSの症候の発生頻度は欧米人と異なり,人種差がある(表2)。

【2】初経から継続する月経異常が特徴的であり,比較的軽度な異常が多い(表3)。

【3】多毛

❶男性化の代表的な症候は多毛であるが,多毛の正常範囲に関するデータがなく,主観的になりやすい。

❷一般に東洋系は多毛が少なく,さらに評価を行う前に多毛が処理されている場合も少なくないので注意する。

【4】肥満

❶一般成人日本女性の肥満の頻度は8.7%であるが,PCOSでは25.3%と高い。

❷皮下脂肪は男性型脂肪,いわゆる内臓脂肪型肥満が多い。

検査所見とその読みかた

【1】経腟超音波断層法

❶卵巣所見は主として経腟超音波断層法にて診断する。

❷多囊胞の診断は少なくとも一方の卵巣で2~9mmの小卵胞が10個以上存在するものとする(表4図1)。

【2】内分泌検査

❶排卵誘発薬や女性ホルモン薬を投与していない時期に10mm以上の卵胞が存在しないことを確認のうえで行う。

❷ゴナドトロピンの測定:月経または消退出血から10日目までの時期は高LHの検出率が低いことに留意する。測定値が症候や卵巣所見と一致しない場合には,時期を変えて測定すると明確になる場合がある。

❸男性ホルモンの測定:テストステロン,遊離テストステロンまたはアンドロステンジオンのいずれかを用い,各測定系の正常範囲上限を超えるものとする(図2)。

❹その他:血中プロラクチン,インスリン抵抗

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