診断のポイント
【1】妊娠時に高血圧(140/90mmHg以上)を認めた場合,妊娠高血圧症候群(HDP)と診断する。妊娠20週以降に高血圧のみを認め,分娩後12週までに正常に復する場合,妊娠高血圧(gestational hypertension)と診断する。
【2】妊娠20週以降に高血圧を認め,蛋白尿もしくは蛋白尿を認めなくても母体臓器障害〔肝酵素上昇(ALT,AST>40IU/L),重度の持続する右季助部痛もしくは心窩部痛,進行性の腎障害(Cr>1.0mg/dL),脳卒中,神経障害(子癇を含む),血液凝固障害(血小板減少<15万/μL,播種性血管内凝固症候群[DIC],溶血)もしくは子宮胎盤機能不全(胎児発育不全,臍帯動脈血流波型異常,死産)〕を伴う場合,妊娠高血圧腎症(preeclampsia)と診断する。
【3】高血圧もしくは蛋白尿が妊娠前から存在し,妊娠20週以降に妊娠高血圧腎症となる場合,加重型妊娠高血圧腎症(superimposed preeclampsia)と診断する。
【4】高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在しており,加重型妊娠高血圧腎症を発症していない場合,高血圧合併妊娠(chronic hypertension)と診断する。2018年の診断基準の改訂により加わった。
【5】妊娠34週未満に発症するものを早発型,妊娠34週以降に発症するものは遅発型と分類する。
症候の診かた
【1】妊婦健診で血圧測定と尿蛋白定性検査は必ず行うので妊娠高血圧症候群は容易に診断できる。
【2】心窩部痛,全身倦怠感,視覚障害などで内科を受診した際,妊娠高血圧症候群を見逃してしまうことがあるので,妊婦が受診した際は,必ず血圧測定と尿蛋白定性検査を行う。
緊急対応の判断基準
【1】高血圧緊急症(血圧が180/120mmHg以上):直ちに静注薬による降圧療法(ニカルジピン,ヒドララジン,ニトログ