診療支援
診断

新生児壊死性腸炎
Necrotizing Enterocolitis (NEC)
小野 滋
(自治医科大学教授・小児外科)

診断のポイント

【1】(極)低出生体重児。

【2】哺乳(注入)開始後の腹部膨満,腹壁の浮腫,色調不良。

【3】胃残乳の増加,便潜血,血便。

【4】代謝性アシドーシス。

【5】腹部X線検査での腸管ガス固定ループ像,腸管壁内ガス像,門脈内ガス像,腹腔内遊離ガス像。

緊急対応の判断基準

【1】腹部X線検査にて腹腔内遊離ガス像を認めた場合は,緊急開腹術の適応であり,すみやかに小児外科に相談する。所見が不確かな場合は,左側臥位正面像撮影(デキュビタス撮影)か仰臥位クロステーブル側面像撮影を施行する。

【2】臨床症状と腹部X線検査にてNECが疑われた場合は,絶飲食(注入を止める)とし,経鼻胃管を挿入し消化管の減圧を行うとともに,早期から積極的に内科的治療を開始する。

症候の診かた

【1】腹部膨満:哺乳開始後,あるいは経管栄養開始後に初発症状として認められることが多い。(極)低出生体重児の未熟性による腸管拡張との鑑別が肝要である。

【2】不機嫌,活気不良:初発症状として認められることが多く,見落とすことがないよう日々の詳細な全身状態の観察が大切である。

【3】血便:進行例では明らかな肉眼的血便が認められるが,初期段階でははっきり認められないことも多い。

【4】胃残乳の増加:経管栄養の場合は胃前吸引量の増加が初発症状のことがあり,胆汁性であれば要注意である。

検査所見とその読みかた

【1】腹部X線検査

❶初期は腸管ガスの拡張像が認められ軽度のイレウスを呈する。

❷進行すると高度の腸管拡張や腸管の固定ループ像が認められ,さらには腸管壁内ガス像,門脈内ガス像が認められる(図1a)。

腸管壁内ガス像は腸管壁内に侵入した腸内細菌が産生したもので,増悪すれば門脈内ガスに移行する。

腹腔内遊離ガス像は腸管壊死が進行し,穿孔したことを示す(図1b)。

【2】血液検査

❶末梢血白血球数は初期には増加し好中球も増加するが,重症化すると減少す

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