診療支援
診断

■小児疾患の最近の動向
岡 明
(東京大学大学院教授・小児科学)


 小児領域では,従来原因不明とされてきた疾患の背景となる遺伝子レベルの異常が次々に明らかになってきており,さらに遺伝子レベルの画期的な治療法の開発から,ゲノム医療の観点での疾患の診断自体の枠組みに大きな変化が生じている。

 先天異常についても,従来は染色体検査のGバンド検査を行い,染色体数が大きな構造の異常(転座,欠失など)の診断が行われてきた。しかし,より微細な染色体レベルでの異常による遺伝子のコピー数多型(copy number variation:CNV)がマイクロアレイ解析によって検出が可能になり,従来のGバンドで陰性の児でも病的と判断されるCNVが同定されるようになってきている。米国小児科学会では,全般的な発達遅滞の児については,従来のGバンド検査ではなく,染色体マイクロアレイ解析を第1選択の検査項目として推奨している。わが国では,マイクロアレイ解析によるCNV検査は保険適用とはなっておらず,その点が臨床現場での非常に大きな課題となっている。

 さらには,原因不明の先天性疾患において,遺伝子レベルの異常の検査として次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析あるいは全ゲノム解析が臨床現場にも導入されてきている。ただしエクソーム解析では,バイオインフォマティクスによるデータの解析が必須であり,より高度の技術が必要となるが,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)では未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases:IRUD)を全国に拠点施設を設けて展開している。

 こうした検査方法の発展により,従来は患者の症状・表現型から原因遺伝子を推測し遺伝子異常の検索を行っていたものが,全染色体,あるいは全エクソーム,あるいは全遺伝子を一期的に検査しデータを解析する手法が広く用いられるようになってきている。今後,保険

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