診断のポイント
クループの診断は臨床的に行われる。後述する重症例ではファイバースコープによる確定診断を,治療と並行して行うことが必要と考える。
【1】喉頭部の狭窄によって生じるさまざまな程度の吸気性喘鳴,咳(犬吠様),嗄声が重要な症状である。同時または先行する鼻漏,軽度の咳,発熱などがあれば感染性クループが強く疑われる。
【2】夜間に咳が悪化するのが特徴である。
【3】興奮したり,啼泣したりすると症状や徴候は著明に悪化する。数日の間再燃することがあるが,1週間以内に完全に消失する。ほとんどのクループ症候群患児は軽症の経過で回復する。
【4】患者の年齢は3か月~3歳までが多く,1歳にピークがある。年長児では重症例は少ない。
【5】秋の流行はパラインフルエンザ1,2型が原因のことが多い。春から夏にかけての流行ではパラインフルエンザ3型が原因となる。
緊急対応の判断基準
【1】呼吸困難:重症度評価がきわめて重要である。重症例では何よりも気道確保が優先される。
❶古典的にはWestleyのクループスコア(表1図)が提唱されており,このようなスコアリングシステムは治療効果判定を学問的に行う際にはきわめて有用であるが,呼吸困難を有する児を眼前においてトリアージする際には,直感的に評価できることが重要である。
❷その意味で,木村の提唱する以下の重症度分類(小児科診療ガイドライン─最新の診療指針 第3版.pp52-54,総合医学社,2016)は日常臨床で使いやすいと考える。
■軽症:嗄声や犬吠様咳嗽のみで努力性呼吸を認めない状態。
■中等症:安静時の吸気性喘鳴と努力性呼吸を認める状態。
■重症:明らかなチアノーゼを認める状態。
❸経験上,重症をさらに以下のように分類すると救急外来で患者を診察した際に有用ではないかと考えられる。
■重症:アドレナリンの吸入と副腎皮質ステロイド薬の静注または筋注による治療を直ちに開始する