[Ⅰ]カテコールアミン誘発多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia:CPVT)†
診断のポイント
【1】まれな疾患である。
【2】アドレナリン刺激で2方向性,もしくは多形性心室頻拍が誘発される。
【3】遺伝性不整脈である。
症候の診かた
【1】10歳台もしくは20歳台に,運動誘発性もしくは緊張時の失神を認めた場合,本症を疑う。
【2】運動誘発性失神,けいれん,突然死の家族歴は30%に認めるとされ,本症の診断に有意義である。
検査所見とその読みかた
精神的ストレス,運動,カテコールアミンの投与により心室期外収縮(PVC)が増加し,2方向性心室頻拍(VT)(図1a図),多形性PVC,多形性VT(図1b図),非常に早い多形性VTからの心室細動(図1c図)が出現する。
確定診断の決め手
【1】器質的心疾患を認めず,心電図が正常な40歳未満の患者で,運動もしくはカテコールアミン投与により,ほかに原因が考えられない2方向性VT,多形性VT,多形性PVCが誘発される場合。
【2】発端者もしくはその家族に,CPVTに関連する遺伝子異常を認める場合。
【3】発端者の家族に,心疾患を認めないにもかかわらず,運動により多形性PVC,2方向性VTもしくは多形性VTが誘発される場合。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】Andersen-Tawil症候群:2方向性VTを認めることがある。遺伝子診断で鑑別できる。
【2】てんかん(→):失神の鑑別で重要であるが,運動中の失神はてんかんでは少ない。脳波で鑑別する。
確定診断がつかないとき試みること
RyR2,CASQ2などの遺伝子変異が60~70%の患者で検出されるので,確定診断には有用である。
治療法ワンポイント・メモ
【1】β遮断薬:プロプラノロール,ナドロール,カルベジロールなどが有効である。
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