診療支援
診断

溶血性尿毒症症候群
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Hemolytic Uremic Syndrome (HUS)
石塚 喜世伸
(東京女子医科大学腎臓小児科)

診断のポイント

【1】激しい腹痛と水様性下痢,血便の先行。

【2】溶血性貧血,血小板減少,急性腎障害(3主徴)。

【3】大腸菌O157抗原やベロ毒素の検出,志賀毒素産生大腸菌(STEC)O157LPS抗体,志賀毒素遺伝子の検出。

【4】非典型溶血性尿毒症症候群(atypical HUS:aHUS)や二次性血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)との鑑別。

緊急対応の判断基準

【1】内科的治療に反応しない乏尿(尿量0.5mL/kg/時未満が12時間以上持続する状態),尿毒症症状,高カリウム血症(6.5mEq/L以上)や低ナトリウム(Na)血症(120mEq/L未満)などの電解質異常,代謝性アシドーシス(pH7.20未満),溢水,肺水腫,心不全,高血圧,腎機能低下のためにこれ以上安全に水分(輸液,輸血,治療薬)を投与できない場合のいずれかがある場合は透析の絶対的適応となる〔危険因子:低ナトリウム(Na)血症(130mEq/L以下)やALT上昇(70IU/L以上)〕。

【2】急性脳症を合併することがある。けいれんや意識障害,片麻痺,除脳姿勢がみられた場合は頭部画像検査(CTまたはMRI)と脳波検査が必要となる(危険因子:発症時のCRP 5.0mg/dL以上と透析施行)。

症候の診かた

【1】5歳以下の乳幼児または高齢者に多い。

【2】腹痛,水様性下痢,血便の4~10日後に溶血性貧血,血小板減少,急性腎障害をきたした場合には本症を疑う。

【3】嘔吐や38℃以上の発熱,著明な全身倦怠感,顔色不良,呼吸促迫,尿量減少,浮腫を認めることがある。

【4】20~60%の患者が透析療法を必要とし,10~30%の患者が何らかの中枢神経症状を呈する。

【5】合併症として中枢神経障害(意識障害,けいれん,頭痛,出血性梗塞など),消化管障害(腸管穿孔,直腸脱,腸重積),急性膵炎,循環器障

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