診断のポイント
【1】小児における腹部腫瘍は,悪性では神経芽腫,腎芽腫,肝芽腫,胚細胞腫瘍,横紋筋肉腫,Ewing肉腫,悪性リンパ腫などが挙げられる。
【2】超音波,CT,MRI,RI検査により,腫瘍の局在,性状,遠隔転移の検索を行う。
【3】血液検査,尿検査で腫瘍マーカーの検索を行う。
【4】確定診断には,生検または切除による病理組織学的検査が必須である。
緊急対応の判断基準
【1】小児腹部悪性腫瘍は,小児科医(小児腫瘍医),小児外科医(小児がん認定外科医),放射線治療医などが勤務する専門施設での集学的治療が必要である。診断施設での治療が不可能な場合は,できるだけ早期に専門施設に紹介する。
【2】腫瘍内あるいは腹腔内出血,腫瘍の脊柱管進展による直腸膀胱障害や下肢麻痺などのoncology emergencyの場合:IVR(interventional radiology)や椎体切除,放射線緊急照射が行える高次病院に緊急移送が必要である。
【3】腸重積,イレウスを併発している場合:緊急開腹手術が必要な場合が多く,小児外科医が対応可能な施設に移送する必要がある。
症候の診かた
【1】腹部腫瘤(図1図)
❶多くの小児腹部腫瘍では腹部腫瘤が初発症状となる。
❷腫瘤の位置,大きさ,硬さ,可動性,圧痛の有無などの所見を確認する。
【2】泌尿器症状
❶Wilms腫瘍では肉眼的血尿が発見の契機となる。この際,おむつが赤くなっているなどの所見で気付かれる。
❷先に述べたように脊髄圧迫をきたせば,神経因性膀胱による尿閉などをきたしうる。
【3】消化器症状
❶腫瘤による圧排や直腸障害により,高度便秘,腸閉塞で発症する。
❷悪性リンパ腫ではしばしば腸重積で発症することがあり,年長児腸重積においては必ず鑑別しなくてはならない。
【4】腹部症状以外の症候,あるいは奇形症候群に合併する場合が知られている。
❶神経芽腫:眼球突出,皮下結節,難
関連リンク
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