診療支援
診断

小児の糖原病
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Glycogen Storage Disease (GSD)
福田 冬季子
(浜松医科大学病院教授・准教授・小児科)

 本項では肝型糖原病(Ⅰ,Ⅲ,Ⅵ,Ⅸ型)について記す。筋型糖原病については,別項()を参照のこと。

診断のポイント

【1】肝腫大,腹部膨満,肝逸脱酵素の上昇(Ⅰ,Ⅲ,Ⅵ,Ⅸ型)。

【2】空腹時低血糖(Ⅰ,Ⅲ,Ⅵ,Ⅸ型)。

【3】成長障害(Ⅰ,Ⅲ,Ⅵ,Ⅸ型)。

【4】Ⅰ型:空腹時血中乳酸上昇,食後乳酸低下。

【5】Ⅲ型,Ⅵ型,Ⅸ型:食後乳酸上昇。

症候の診かた

【1】空腹時低血糖:哺乳間隔が長くなる乳児期以降に低血糖が出現する。

【2】肝型:多くの肝型糖原病で乳児期に出現する。腹部膨満を伴う。脾腫は伴わない。

【3】低身長,成長障害。

【4】人形様顔貌(Ⅰ型):頰に脂肪が沈着しふっくらしている。

【5】出血傾向(Ⅰ型):血小板機能障害のため,鼻出血がみられる。

【6】易感染性(Ⅰb型)。

【7】運動発達遅滞,筋力低下(Ⅲ型,Ⅸ型の一部),肥大型心筋症(Ⅲ型)。

【8】腎障害:Ⅰ型では15歳頃から腎障害が出現することがある。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査

❶血液検査

Ⅰ,Ⅲ,Ⅵ,Ⅸ型では空腹時血糖低値,AST,ALT,尿酸,トリグリセリド高値。

Ⅲ型ではCK高値。

血中乳酸の上昇(Ⅰ型では低血糖時,Ⅲ,Ⅵ,Ⅸ型では食後に上昇)。

低血糖時の代謝性アシドーシス(Ⅰ型)。

好中球減少(Ⅰb型)。

❷画像検査

肝腫大:グリコーゲン蓄積のため,超音波検査でエコー輝度上昇,CTで信号強度上昇のパターン。ただし脂肪沈着を伴うこともある。

腎腫大(Ⅰ型)。

【2】特殊検査

❶グルコース負荷試験

Ⅰ型:食後またはグルコース負荷で血中乳酸値が低下。

Ⅲ,Ⅵ,Ⅸ型:食後またはグルコース負荷で乳酸値上昇。

❷グルカゴン負荷試験

低血糖時の乳酸高値を認める場合,Ⅰ型が疑われる場合には,急激に乳酸アシドーシスをきたす危険があるため,実施しない。

Ⅲ型:空腹時の負荷で血糖の上昇がなく,食後2時間の負荷で血糖が上昇する。

Ⅵ型:

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