診療支援
診断

瘭疽・爪囲炎
Felon and Paronychia
馬渕 智生
(東海大学教授・専門診療学系皮膚科学)

診断のポイント

【1】爪甲周囲の皮膚や爪郭軟部組織の細菌感染症。

【2】爪囲の発赤,腫脹,疼痛。

【3】急激に発症する。

症候の診かた

【1】爪囲の発赤,腫脹:軽症例では爪囲の一部にとどまるが,重症例では爪囲がびまん性に発赤,腫脹する(図1図2図3)。

【2】疼痛:拍動性の強い疼痛。

【3】膿瘍:時に膿瘍を伴う。

検査所見とその読みかた

【1】血液検査:白血球数増加,CRP上昇,赤沈亢進などの炎症反応がみられる。

【2】膿からの細菌培養検査:主に黄色ブドウ球菌が検出される。緑膿菌やレンサ球菌が検出されることもある。

確定診断の決め手

 爪囲の感染徴候から診断は容易である。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】ヘルペス性瘭疽:単純ヘルペスウイルス(HSV)の初感染,再発,再感染によって生じる。

❶発赤,腫脹,疼痛,時に生じる膿瘍は瘭疽と類似する。小水疱の集簇(=疱疹,ヘルペス)が鑑別点となる。

❷水疱からのTzanck試験でウイルス性多核巨細胞を確認,または迅速キットでHSVウイルス抗原陽性を確認することで,その場で確定診断できる。

❸水疱内容液からのHSV分離同定,ペア血清によるHSV抗体価上昇も診断に有用である。

【2】カンジダ性爪囲炎()

❶カンジダ感染により後爪郭が発赤,腫脹する。

❷細菌性の瘭疽,爪囲炎に比べ,疼痛が軽微で,膿瘍を伴うことが少ない。

❸爪囲の鱗屑や爪甲からの直接鏡検でカンジダを確認することで確定診断する。

経過観察のための検査・処置

 膿瘍を伴う症例では,抗菌薬内服・外用治療開始前に膿からの細菌培養検査,抗菌薬感受性検査を施行しておくと,難治例での抗菌薬変更に有用となる。

治療法ワンポイント・メモ

【1】セフェム系抗菌薬を内服する。

【2】膿瘍を伴う症例では切開,排膿する。強い疼痛も切開,排膿によって軽減する。

【3】爪を短く切っている症例では,爪甲遊離縁(爪の先端の白い部分)を1~2m

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