Ⅰ.意識障害
【定義】
意識は脳の活動,すなわち精神活動の基盤である.ヒトの精神活動が一貫しており合理的と見なされる前提は,覚醒度(意識水準)が十分に高いことである.意識の機能には深さ(レベル/水準)と広がり(質/内容)が想定されている.意識の機能の深さと広がりはともに段階的というよりむしろ連続的である.
意識障害は,生理的な睡眠とは異なる病態による意識の機能低下の状態を指す.意識障害にはそれぞれ深さの障害と広がりの障害があると見なされている.意識の深さの障害は明識困難状態から意識混濁,傾眠,昏睡へと至る覚醒度(意識水準)が低下する病態に着目したものである.意識の広がりの障害は意識変容状態ともよばれ,思考力・注意力・判断力などの精神機能が狭小化し障害される病態に着目したものである.意識の深さの障害は意識の広がり(質/内容)の障害を伴う.一方で意識の深さの障害がほとんどなく,意識の広がり(質/内容)の障害のみが目立つ場合もある.せん妄はその典型である.
【分類】
覚醒度(意識水準)の最軽度の障害,思考力・注意力・判断力が不安定な状態を明識困難状態という.見当識が不安定で思考力・注意力・判断力が低下しているぼんやりとした状態を意識混濁という.よびかけへの若干の反応があるが外部刺激がなければ眠り込んでしまう状態を傾眠という.外部刺激への反応がない状態を昏睡という.昏睡が遷延し,精神活動が全く失われ,自律的な生命維持活動のみが行われている状態を植物状態〔遷延性意識障害persistent vegetative state(PVS)〕という.昏睡が遷延していても,外部刺激に反応しうる精神活動がある場合を最小意識状態minimally conscious state(MCS)といい,functional MRIで聴覚刺激への反応があるなどの点で植物状態と区別されうる(図1)図.
意識の広が
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