診療支援
治療

睡眠の異常
sleep disorder
三島和夫
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・精神生理研究部部長)

【定義】

 睡眠の異常には,①睡眠の質や量,②出現パターンの異常(不眠,リズム障害)がある,③覚醒機能の異常(過眠)がある,④睡眠中に異常な精神身体現象(異常行動,不随意的な筋活動,自律神経活動,パニック症状など)がある場合に大別される.睡眠障害はこれら睡眠の異常によってさまざまな社会生活機能の障害(QOL障害)が生じる病態の総称である.

 米国睡眠医学会による睡眠障害国際分類The International Classification of Sleep Disorders-3rd edition(ICSD-3,2005)では,①不眠症,②睡眠関連呼吸障害群(閉塞性睡眠時無呼吸症候群など),③中枢性過眠症群(ナルコレプシー,特発性過眠症など),④概日リズム睡眠障害群(睡眠相後退型,交代勤務型など),⑤睡眠時随伴症群(夢中遊行,レム睡眠行動障害など),⑥睡眠関連運動障害群(レストレスレッグス症候群など),⑦孤発性の諸症状,正常範囲と思われる異型症状,未解決の諸問題,⑧その他の睡眠障害,の8群に大別されている.

 多くの睡眠障害では不眠や過眠症状が共通して認められるため,簡単な問診だけでは誤診を招く.各睡眠障害の臨床特徴を踏まえて注意深く聴取し,夜間睡眠ポリグラフ試験,反復入眠潜時検査などを適宜実施して,確定診断と重症度の判定を行う必要がある.聴取すべき代表的な症状として,不眠症状,過眠症状,睡眠中の呼吸異常,睡眠と関連した異常感覚や不随意運動,睡眠中の異常行動,睡眠時間帯の異常などがあり,これらが複数みられることもある.特徴的な症状の有無をもとに順次鑑別を進める.

 睡眠障害は症状の特徴や病態から大きく7群に大別される(図1).患者の愁訴は不眠と眠気に集中しがちだが,これらは大部分の睡眠障害に共通した特異性の低い症状である.「不眠症状あり=不眠症」ではないことに注意する必要があ

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