診療支援
治療

強迫
obsession and compulsion
永田利彦
(なんば・ながたメンタルクリニック・院長(大阪))

【定義】

 日本語では強迫と一言であるが,英語では強迫観念obsessionと強迫行為compulsionに分かれる.また一般に強迫的という場合,強迫性パーソナリティ障害に含まれる完全主義傾向,頑固さも含むが,強迫症/強迫性障害と区別して考える.

 強迫観念は日常生活のなかの実際の問題に対する多少過剰な心配ではなく,持続的で侵入的intrusive qualityな観念,思考,衝動,イメージで,コントロールできずuncontrollability,受け入れ難くunacceptability,不適切なもの,「気が狂った」ものとして体験され,著しい苦痛を引き起こしているものである.そのために無視をしよう,抑えよう,抵抗しようとするが,その結果,さらに不安が高まる.心の中の強迫行為,心配性(全般不安症に認められる),反芻rumination(抑うつ状態の患者にみられる),他のタイプの侵入的な思考(心的外傷後ストレス障害で心的外傷の記憶に関連して想起される侵入的なもの),支配観念(身体症状症,醜形恐怖症,神経性やせ症/神経性無食欲症に認められるもの),妄想(精神病性障害に関連するもの)との区別が必要である.

 強迫行為は繰り返される行為,行動,思考で,多くの場合は強迫観念や病的な恐怖に関連し,また恐ろしい出来事が起きないようにするためや,強迫観念に関連する不安,苦痛を中和neutralizationするために行われる.強迫行為によって不安や強迫観念が和らぐのは一時的であるので,繰り返し行うことが必要となる.強迫行為には目に見える行動のほかに,心の中で繰り返し行われる強迫行為mental act, mental cognition, cognitive compulsionという,他人にはみえないものも含まれる(例えば,黙って繰り返し数えるなど).厳格で強固な規則に基づいて行う儀式ritu

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