【定義】
抑うつ気分は,一般的に「気分が落ち込んでいる」と表現されるような「憂うつな気分」を表す.身体疾患や心理的要因などにより二次性に生じる場合があるが,大うつ病性障害における抑うつ気分は,うつ病の中核症状の1つであり,治療の対象となる一方で,二次性に生じた抑うつ気分は身体状況の改善や心理的要因の解消に伴って自然に軽快する場合が多い.
【分類】
A.双極性障害および関連障害群と抑うつ障害群における抑うつ気分
現在,精神科臨床で広く用いられているDSMは米国精神医学会が作成した国際的診断基準であり,主に症状と持続期間に基づいて操作的診断を行うことで,医師間で診断を統一させることを目的としている.新たに改訂されたDSM-5では,気分障害というカテゴリーがなくなり,双極性障害および関連障害群と抑うつ障害群に分類された.前者には双極性障害,気分循環性障害,後者にはうつ病,持続性抑うつ障害,重篤気分調節症,月経前不快気分障害が含まれ,各群において物質・医薬品誘発性双極性障害および関連障害/抑うつ障害,他の医学的疾患による双極性障害および関連障害/抑うつ障害が含まれる.
1.双極性障害における抑うつ気分
双極性障害はうつ病相と(軽)躁病相という,両極端な病相を繰り返す病態を特徴とし,うつ病相ではうつ病と同様の抑うつ気分がみられる.うつ病相で発症した双極性障害における抑うつ気分と,うつ病における抑うつ気分を鑑別するのは困難である.
2.気分循環性障害における抑うつ気分
気分循環性障害では,抑うつエピソードを満たさない程度の抑うつ症状と軽躁病エピソードを満たさない程度の軽躁症状を呈する期間を長期にわたって(2年以上)繰り返す.抑うつ気分の程度としては比較的軽度であるものの,周期的な気分の変化が長期的に持続する.
3.うつ病における抑うつ気分
抑うつエピソードの中核症状の1つとなる.2週間以上にわた