診療支援
治療

双極性障害および抑うつ障害の疾患概念
concept of bipolar disorders and depressive disorders
三浦智史
(九州大学病院講師・精神科神経科)
神庭重信
(九州大学大学院教授・精神病態医学)

【定義・病型】

 双極性障害および抑うつ障害は,優勢な症状として気分の障害をもつ疾患である.DSM-5では,従来は気分障害として同一カテゴリー下に分類されていたこれらの障害を,症候論,家族歴,および遺伝学的観点から,「双極性障害および関連障害群」と「抑うつ障害群」とに分けている.双極性障害および抑うつ障害の診断は,これまでに経験した気分エピソードの種類によって行われる.気分エピソードは,①抑うつ気分,および興味または喜びの喪失を中核症状とする「抑うつエピソード」,②気分が異常かつ持続的に高揚し,開放的で,または易怒的となり,加えて,異常にかつ持続的に亢進した目標指向性の活動または活力が認められる「躁病エピソード」,さらに③躁病エピソードよりも持続期間やその程度においてより軽症である「軽躁病エピソード」,の3種類からなる.そして,躁病,軽躁病エピソードの既往歴をもたない場合を抑うつ障害と診断し,それらの既往歴をもつ場合を,双極性障害と診断する.加えて,身体疾患や物質使用が関与すると判断される場合には,それぞれ「他の医学的疾患による抑うつ障害・双極性障害および関連障害」,「物質・医薬品誘発性抑うつ障害・双極性障害および関連障害」と診断して区別する.

【歴史的展望】

 精神病の基本状態を,気分の障害と思考の障害の2群に分類したのはZeller EA(1804-1877)である.しかしそれは単一精神病の枠を超えたものではなかった.臨床経過の違いにより内因性精神病を2つの症候群,すなわち躁うつ病と早発痴呆(統合失調症)を異なる疾患単位として区別したのはKraepelin E(1856-1926)であった.やがて躁うつ病は感情障害と置き換えられ,さらに気分障害とよばれるようになった.気分障害の輪郭は広く,以前であれば統合失調症,パーソナリティ障害,あるいは神経症と診断された多くの状態を包含す

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