◆疾患概念
【定義】
強迫症(OCD)は,繰り返し生じる思考(強迫観念)とそれを打ち消すための繰り返しの行動(強迫行為)を主たる症状とする疾患である.強迫観念や強迫行為は通常不安や苦痛を伴い,長時間を費やすことにより日常生活に強い悪影響を生じる.DSM-Ⅲ以来,OCDは不安障害のカテゴリーに収載されていたが,2013年に刊行されたDSM-5では,新設された「強迫症および関連症群」へと移行した.ここでは,醜形恐怖症,抜毛症,新設のためこみ症などと同一カテゴリー化がなされている.
OCDの症状は基本的には,健常な思考や日常的な動作の延長上に出現する.それは例えば汚染や感染の不安からくる洗浄行為であり,加害や過失のおそれからくる確認行為である.OCDの症状は多彩であり,このほかに物の位置の対称性や文章の正確性へのこだわり,幸運,不運な数へのこだわり,無意味な行動の反復,価値観の喪失に伴うためこみ,性的・宗教的な思考へのとらわれなど,多様な症状亜型がみられる.多くの患者では複数の症状が併存する.
患者の多くは強迫観念を自我異和的であると感じ,その苦痛から逃れるために強迫行為を行う.過剰な強迫行為は患者に葛藤を生じさせ,周囲に気づかれないような努力を重ねる者も多い.ただし,なかには症状に対する不合理感が失われ妄想に近い思考を伴うものや,症状の表出に際してほとんど不安の介在がみられないケースも存在する.
【病態】
臨床的に三環系抗うつ薬クロミプラミン(アナフラニール薬)やSSRIの有効性が証明され,さらに動物を用いた基礎研究の結果などから,セロトニン(5-HT)神経系の異常,特に前頭眼窩面における5-HT受容体の機能変化がOCDの病態に関与することが推定されている.一方,難治例ではSSRIの有効性は低く,抗精神病薬による強化療法が有効であり,ドパミン系の関与があると示唆されている.さらに最
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