◆疾病概念
【定義】
元来自己愛性パーソナリティ障害(NPD)や病的自己愛という概念は,精神分析に由来するものであった.1980年に現れたDSM-Ⅲで採用されたことで,ようやく臨床的カテゴリーとして広く認められるようになった.ナルシシズムnarcissism(自己愛)とは,自己自身へのリビドー備給として定義されるが,正常に機能するなら自尊心や自信の基盤となる.しかし,病的自己愛の場合は,非現実的に誇大な自己のイメージをもっている.この誇大な自己イメージを基盤にもつパーソナリティ構造は,特徴的な病理を示す.
DSM-Ⅳでは,NPDは,「尊大で,賞賛を求め,共感を欠く」と記述されている.しかしそれに加えて,「自己評価が傷つきやすく,過敏で,屈辱に対しては激しく反応し,批判や敗北に対しては空虚感や軽蔑が生じる.批判や競争に耐えられないので,職業的にも不安定である」という一見,過敏で自己評価の低い特