診療支援
治療

適応障害
adjustment disorders
賀古勇輝
(北海道大学大学院講師・精神医学)
久住一郎
(北海道大学大学院教授・精神医学)

◆疾患概念

【定義】

 適応障害とは,明らかなストレス要因に対する不適応反応として抑うつや不安などの情動の障害と行動の障害のいずれかもしくは両方を呈し,生活機能に著しい障害をきたす精神障害である.ストレス要因の種類は特定されていないが,誰にとっても強いストレスとなるような破局的な出来事(災害や交通事故,犯罪被害など)よりは,比較的頻度が多く日常的なこと(身体疾患への罹患や職場ストレス,経済的問題,家庭内不和など)が多い.また,不適応反応を呈するかどうかは,個人の素質すなわちストレス脆弱性に大きな影響を受けている.

 DSM-5では,症状はストレス因の始まりから3か月以内に出現するとされ,ストレス因またはその結果が終結してから6か月以上持続することはないとされている.また,ストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛,もしくは社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の重大な障害を認めるときに診断されるが,他の精神疾患(うつ病や不安症など)の基準を満たしていないことが条件であり,正常の死別反応も除外される.ICD-10では,ストレス因から1か月以内に発症するとしているところがDSM-5と異なっている.

【症状・病型】

 症状は情動の障害と行動の障害に大別され,前者では抑うつ気分や涙もろさ,絶望感,焦燥感,神経質,過敏などがあり,後者では怠学や無断欠勤,破壊行為,自傷行為,無謀な運転,けんか,社会的ルールの無視などがある.ほかには,さまざまな身体症状(頭痛,肩こり,動悸,食欲不振,下痢,倦怠感など)がしばしば認められ,社会的ひきこもり,不定愁訴,身体疾患の否認,治療への抵抗などが問題となることもある.

 病型としては,DSM-5では「抑うつ気分を伴う」「不安を伴う」「不安と抑うつ気分の混合を伴う」「素行の障害を伴う」「情動と素行の障害の混合を伴う」「特定不能」に分類されており,

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