診療支援
治療

前頭側頭型認知症
Frontotemporal dementia (FTD)
寺田整司
(岡山大学大学院准教授・精神神経病態学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 はじめに,混同しやすい概念である前頭側頭型認知症と前頭側頭葉変性症frontotemporal lobar degeneration(FTLD)について簡略に述べておく.FTDという概念が成立したのは,1980年代後半というほぼ同時期に,スウェーデンのルンド大学と英国のマンチェスター大学の2グループが,別々に提唱した似通った概念に始まる.その後,1994年に両グループが,共同でFTDという臨床概念を提唱した.FTDの臨床症状は,性格変化や行動異常が顕著であり,画像では,前頭・側頭葉の選択的な萎縮が認められる.一方,FTLDは,1996年にマンチェスター大学のグループが提唱した概念であり,FTD,進行性非流暢性失語progressive non-fluent aphasia(PNFA),意味性認知症semantic dementia(SD)の3つの症候群を含んでいる.

 ただ最近では,従来FTD(狭義のFTD)とよばれてきた病型を,あえて行動障害型の前頭側頭型認知症behavioral variant FTD(bvFTD)とよぶ場合も少なくない.その場合には,bvFTD・SD・PNFAを含めた臨床的な包括概念としてFTD(広義のFTD)が用いられる一方,FTLDは病理学的な包括概念としてのみ用いられる.混乱を招きやすいため注意が必要である.なお,本稿の本文中では,FTDは狭義の意味で用いる.

【病態・病因】

 最近まで,臨床像がFTLD(広義のFTD)であっても,その病理所見の分類は,多数のまれな病態を含む複雑なものであった.しかし,最新の研究から,FTLDは3つの主要なグループに分かれることが明らかとなった.すなわち,FTLD-tauとFTLD-TDPという頻度の高い2グループと,まれなFTLD-FUSである.なお,これらは脳内神経細胞に蓄積する異常蛋白

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