診療支援
治療

傍腫瘍性・自己免疫性辺縁系脳炎
paraneoplastic and autoimmune limbic encephalitis (PLE and ALE)
藤田浩司
(徳島大学大学院・臨床神経科学分野(神経内科))
湯浅龍彦
(鎌ヶ谷総合病院千葉神経難病医療センター・センター長)

◆疾患概念

【定義・病型】

 古くは腫瘍の直接浸潤によらない,遠隔効果による辺縁系脳炎を傍腫瘍性辺縁系脳炎paraneoplastic limbic encephalitis(PLE)といった.現在では遠隔効果の本体は免疫学的な反応であるとの認識が一般的である.

 PLEは関与する抗神経抗体の種類によって大きく2つに分類される.第1は細胞内抗原に対する抗体がみられるもので,古典的PLEである.第2は細胞表面のシナプス蛋白に対する抗体が関連する,最近知られるようになった新規PLEである.ただし後者の抗体は,PLEのみならず非傍腫瘍性の辺縁系脳炎にもかかわっているため,近年,自己免疫性辺縁系脳炎autoimmune limbic encephalitis(ALE)とも称される.なお,抗体が関与し非傍腫瘍性のものを特に,自己抗体介在性急性可逆性辺縁系脳炎(AMED-ARLE)とよぶ(別項).

【病態・病因】

 古典的PLEでみられる抗体には抗Hu抗体,抗Ma2抗体,抗CRMP5抗体などがある.抗Hu抗体陽性PLEは肺小細胞癌,抗Ma抗体陽性PLEは精巣腫瘍,抗CRMP5抗体陽性PLEは肺小細胞癌や胸腺腫を主に伴う.しかし,これらの抗体が辺縁系を侵す機序は不明である.病理学的には,血管周囲や間質のT細胞浸潤,グリオーシス,神経細胞貪食,神経細胞脱落を認める.B細胞も血管周囲に集簇し,形質細胞浸潤を伴うことがある.

 新規PLE/ALEの抗体としては抗NMDA受容体抗体,抗VGKC複合体(実際の抗原はLGI1やCaspr2)抗体,抗AMPA抗体,抗GABAB抗体などがあり,前二者が大部分である.抗NMDA受容体抗体陽性脳炎(抗NMDA受容体脳炎:厳密には“辺縁系”脳炎とされていない)ではしばしば卵巣奇形腫を伴うが,その頻度は年齢,性別,人種によって異なる.抗LGI1抗体陽性辺縁系脳炎では腫瘍はま

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