診療支援
治療

外傷性脳損傷
traumatic brain injury (TBI)
唐澤秀治
(総合病院国保旭中央病院脳神経外科脳神経疾患センター・センター長(千葉))

◆疾患概念

 頭部外傷後遺症としての認知障害に関しては,診療科によって使用する用語が異なり,かなりの混乱がみられている.疾患概念として,以下1-4を理解しておく必要がある.

1.脳神経外科領域で使用されている頭部外傷(head injury)

 脳神経外科領域では,頭部外傷を,①頭蓋骨骨折,②頭蓋内または脳実質の局在性損傷,③脳実質のびまん性損傷の3つに分けたGennarelliの分類が用いられており,このなかに「外傷性脳損傷」という用語は存在しない.また頭部外傷の重症度に関しては,国際的にはグラスゴーコーマスケール(GCS)(深昏睡が3,意識清明が15)が用いられ,13-15が軽症,9-12が中等症,3-8が重症と定義されている.

2.WHOが推奨した軽度外傷性脳損傷の基準

 1993(平成5)年に米国リハビリテーション学会が「軽度外傷性脳損傷mild traumatic brain injury(MTBI)」の定義を提案したが,その後用語の意味するところが論文によって異なり,混乱が生じてしまった.そこで,2004(平成16)年にWHOのタスクフォースが混乱しているMTBIに関する文献をレビューし次のようなoperational criteria(運用基準)を推奨した(ⅰおよびⅱを満たすこと).(ⅰ)以下のうち1つ以上:①混乱や失見当識,②30分以下の意識消失,③24時間以内の外傷後健忘,④その他の一過性の神経学的異常(巣症状やけいれん,外科手術を必要としない頭蓋内病変),(ⅱ)受傷後30分またはそれ以降の診察時点でのGCSが13-15.

3.DSM-5における外傷性脳損傷による認知症

 DSM-5では,「外傷性脳損傷による認知症(DSM-5)または外傷性脳損傷による軽度認知障害(DSM-5)Major or Mild Neurocognitive Disorder Due to Tr

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