診療支援
治療

抗うつ薬による精神症状
psychiatric symptoms due to antidepressants
堀川直史
(埼玉医科大学客員教授・かわごえクリニックメンタルヘルス科)
國保圭介
(コクボ診療所)

◆疾患概念

 抗うつ薬に関係して生じると推定される精神症状のうち代表的なものは,activation syndrome(賦活症候群)あるいはjitteri-ness/anxiety syndromeと,discontinuation syndrome(退薬症候群,中断症候群,中止後症候群)であろう.そのほかに抗うつ薬服用中の自殺の問題があり,SSRI使用中にアパシーが生じうるとも指摘されているが,これについての詳細は不明である.

【定義・病型】

A.activation syndromeあるいはjitteriness/anxiety syndrome

 抗うつ薬を使用したとき,特に使用開始からまもない時期に,不安,焦燥,苛立ち,衝動性などが強まる場合のあることは古くから知られていた.このような症状は主にjitterinessとよばれるが,そのほかにactivationなどの言葉も用いられている.

 これとは少し異なる視点から,1990年代以降主にSSRIを使用したときに自殺関連症状が強まる危険性が指摘されるようになった(この問題に関する現在の知識は以下に述べる).これを受けて,米国食品医薬品局(FDA)は,2004(平成16)年2月の勧告で,抗うつ薬使用開始時や増量時にactivating symptoms(不安,焦燥,パニック発作,不眠,易刺激性,敵意,衝動性,アカシジア,軽躁病,躁病という10の症状であり,activation syndromeとまとめられた)が生じる場合があることを述べ,これは(小児および成人の)自殺傾向の上昇を示すシグナルである可能性があり,十分な注意が必要であると指摘した.

 このactivation syndromeであるが,一見してわかるように,範疇の異なるいくつかの症状を含んでいる.すなわち,抗うつ薬に関係して生じたと推定される原疾患の悪化と躁転,抗うつ

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