◆疾患概念
【定義・病型】
抗てんかん薬antiepileptic drugは,一部は気分障害,疼痛性障害などにも広く用いられているが,その主たる対象疾患はてんかんである.また抗てんかん薬による精神症状が最も出やすいのも,てんかんである.そこで本項では,てんかん患者における,抗てんかん薬による精神症状について述べる.
抗てんかん薬による主な精神症状は以下の5つである.①精神病症状,②抑うつ症状,③行動変化(易刺激性,不機嫌,多動など),④認知機能への影響(思考力・集中力・判断力低下など),⑤心因性非てんかん性発作(偽発作・擬似発作)の誘発・増悪.
【原因】
原因を表1図にまとめた.抗てんかん薬が直接に精神症状の原因となるだけでなく,抗てんかん薬によっててんかん発作が減少(あるいは期せずして増加)すると,そのために精神症状が出現するという機序も忘れてはならない.またこれらのいずれにも,患者側の器質因あるいは素因がリスクファクターとして絡んでくる.
表1図の各項目を補足説明しておく.まず薬物の作用自体に関しては,抗てんかん薬の作用機序を大きく2つに分けて,精神面への影響を考える視点がある.1つはGABA-ergicな作用をもつ抗てんかん薬で,バルビツール酸系薬,ベンゾジアゼピン系薬,バルプロ酸,ガバペンチン薬などが含まれる.鎮静,抗不安,抗躁効果が期待できる群である.もう1つはantiglutamatergicな作用をもつ抗てんかん薬で,ラモトリギン薬などが含まれる.賦活,抗うつ効果が期待できる群である.トピラマート薬は両群の中間に位置づけられる.この2分法は大きな観点として有用だが,臨床場面ではこれ以外の機序も複雑に影響し,これほど単純にはいかない.
また薬物によっては多量・過量投与(高血中濃度)により,精神面への影響が強く出るものがある.フェニトイン薬,トピラマート薬などである
関連リンク
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