診療支援
治療

インターフェロンによる精神症状
psychiatric symptoms related to interferon
佐藤晋爾
(埼玉県立大学准教授・精神医学)
水上勝義
(筑波大学大学院教授・人間総合科学研究科)

◆疾患概念

【定義・病型】

 インターフェロンinterferon(IFN/peg-IFN)は,主にC型慢性肝炎,多発性硬化症,慢性骨髄性白血病や腎癌,悪性黒色腫,脳腫瘍などの治療薬として用いられるサイトカインである.一般的なIFNの副作用は,発熱,倦怠感,頭痛,筋肉痛,食欲低下などインフルエンザ様身体症状,血球減少,甲状腺機能異常などである.一方,IFN使用開始後にさまざまな精神症状が生じることが知られており,IFN治療が中断される理由の1つとなっている.症状は,大別すると気分障害(うつ・躁),意識障害(せん妄),精神病状態であり,そのほかに不眠,不安・焦燥状態,希死念慮,人格変化などがある.

【病態・病因】

 IFNは分子量が2万前後で脳血液関門を通過しないとされているが,大量投与で2-4%程度,中枢神経組織へ浸透することが報告されている.IFNαの精神症状の機序として以下の可能性が指摘されている.①IFNそのものの中枢への直接作用,②IFNによって二次的に産生が促進されるinterleukin-1,2,6やtumor necrosis factorなどのサイトカインを介した間接作用,③IFNがACTHに構造的に類似するために生じるコルチゾール上昇,④IFNのオピオイド様神経伝達物質作用,である.ほかにもIFNが神経伝達物質(セロトニン,ドパミン,グルタミン酸)を動かし,それらが精神症状の形成に関連しているとの報告もある.

 一方,精神症状発現のrisk factorとして,加齢,器質的脆弱性,精神疾患の既往・家族歴,物質依存などが挙げられている.さらにIFNの投与量については,1回投与量が多いと精神症状が出現しやすく総投与量は関係しないという報告が多い.ほかにも,IFNの投与経路,投与頻度,他の化学療法との併用,頭部への放射線療法の併用なども影響する.IFNの種類による差がない

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