潰瘍の治療薬のなかで,精神症状をきたしやすい薬剤は,主として胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬,H2受容体拮抗薬の2種類である.防御因子増強薬として抗ドーパミン薬は抗精神病薬作用をもつ一方で錐体外路症状を生じることがある.
プロトンポンプ阻害薬
胃壁の細胞のH+分泌の最終段階といわれているプロトンポンプを特異的に阻害することによって,胃酸の分泌を抑制する.H2受容体拮抗薬より胃酸分泌抑制効果が強力なため,消化性潰瘍,逆流性食道炎などさまざまな種類の胃潰瘍の第一選択薬となっている.わが国では,オメプラゾール薬(オメプラール),ランソプラゾール薬(タケプロン),ラベプラゾール(パリエット薬),エソメプラゾール(ネキシウム薬)の4種が認可されている.出血を伴う胃潰瘍で内服のできない症例にはオメプラゾール薬とランソプラゾール薬に注射液剤が用意されている.4種のプロトンポンプのうち,オメプラゾール,エソメプラゾールに中枢神経系への副作用が報告されている.錯乱状態を引き起こすとされているが,せん妄を主体とした意識障害と考えてよいだろう.その作用機序や頻度は不明である.
◆治療方針
昨今では「再発,再燃を繰り返す逆流性食道炎」「維持療法の必要な難治性逆流性食道炎」の診断記載のもとにレセプト上でも長期処方が可能となっているため,漫然と処方されているケースがあとを絶たない.またピロリ菌除去が保険適用となり,3剤併用療法が一般的に使われている.パックで認可されている,ランサップ,ランピオン,ラベキュア,ラベファインは抗潰瘍薬がランソプラゾールとラベプラゾールが主剤となっており,精神症状出現のリスクはないが,抗潰瘍薬を個別に選択している場合,注意が必要となることを忘れてはならない.
それでももし中枢神経系の副作用が出現した場合は,まずは原因薬剤を中止することが第1である.抗潰瘍薬を中止するこ
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