診療支援
治療

睡眠時随伴症
parasomnia
佐藤雅俊
(横手興生病院)
清水徹男
(秋田大学大学院教授・精神科学)

◆疾患概念

【定義・分類】

 睡眠時随伴症とは,睡眠中あるいは覚醒と睡眠との境界の状態で起こる異常な現象を指す言葉である.患者の訴えはその異常な現象に限られており,その異常な現象が原因となって不眠や過眠などの障害が生じることは少ない.睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)では,睡眠時随伴症をさらに,覚醒障害(ノンレム睡眠からの覚醒時に起こるもの),通常レム睡眠に伴って起こる睡眠時随伴症,その他の睡眠時随伴症の3つに分類している.本項では,ICSD-2の診断分類に従い,主な睡眠時随伴症の疾患特徴について述べる.なおICSD-3においても睡眠時随伴症の分類はおおむね変わっていない.

覚醒障害(ノンレム睡眠からの覚醒時に起こるもの)

 ICSD-2では錯乱性覚醒,睡眠時遊行症,睡眠時驚愕症の3疾患に分類されている.これらはいわゆる“ねぼけ”に相当するものであり,それらの病態生理学的機序には覚醒障害が共通して関与する.

錯乱性覚醒

◆疾患概念

【定義・病型】

 典型的には夜の初めに認められる徐波睡眠からの覚醒中や覚醒後の精神的錯乱や錯乱的行為で,朝,目を覚まそうとするときにも認められる.時間や空間の見当識を失い,動作が緩慢になって精神作用が減退し,質問や指示への反応が鈍くなる.無理やり起こされた場合,患者は身をよじって抵抗し,ますます興奮することが多い.ほとんどのエピソードが5-15分で終わるが,なかには30-40分持続する場合もある.

【病態・病因】

 視床下部後部,中脳網様体領域,脳室周囲灰白質など覚醒をつかさどる脳領野の病変に随伴する錯乱性覚醒の報告がある.しかし,患者の大多数には特定の脳病変は認められない.

【疫学】

 性差はなく,特に子どもと35歳未満の成人でよく認められる.3-13歳までの有病率は17.3%,15歳以上の成人の有病率は2.9-4.2%である.

【経過・予後】

 子どもの錯乱性覚醒は

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?