診療支援
治療

周期性四肢運動障害
periodic limb movement disorder (PLMD)
水野創一
(福山医療センター・精神科医長(広島))
堀口 淳
(島根大学教授・精神医学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 周期性四肢運動障害(PLMD)とは,睡眠中に出現する四肢の周期的な不随意運動periodic limb movement(PLM)が原因となって,入眠障害や中途覚醒,日中の眠気を生じる睡眠覚醒障害である.夜間睡眠中,下肢にミオクローヌス様の不随意運動が出現することは古くから知られていたが,てんかんに伴う運動症状と区別されたのは比較的近年である.2014年に改訂された睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)では睡眠関連運動障害に分類されている.

【病態・病因】

 PLMの運動形態は足関節の背屈およびバビンスキー反射に類似した拇趾の背屈と他足趾の開扇運動であり(図1),これらの運動が数十秒間隔で周期的に出現する.PLMは一夜の睡眠を前半と後半に分けた場合,前半部分に出現することが多い.また浅いノンレム睡眠である睡眠段階1と2で出現しやすいため,浅睡眠から深睡眠への移行を妨害し,熟睡することが難しくなる.筋収縮の持続時間が長いPLMほど,睡眠に与える影響が大きい.下肢の反射に関する研究によると,脊髄単シナプス反射や伸張反射,各種腱反射は睡眠中に抑制されるが,これには背側網様体脊髄路から脊髄前角細胞に至る反射抑制機能が作用している.PLMが脳幹障害や脊髄横断性障害の患者に高頻度に出現するのは,健常者に通常機能している中枢から脊髄前角細胞への抑制力が低下しているためと考えられている.PLMの規則的な筋放電周期は,睡眠中の動脈圧や呼吸,心拍数,瞳孔径がPLMとほぼ同じ周期の20-40秒で変動していることから,睡眠中の交感神経系活動の周期的変動が,何らかの形でPLM発症の閾値低下に関与していると考えられている.

【疫学】

 PLM出現は,睡眠状況に大きな影響を受けるため,検査日によって非常にばらつくことがある.したがって正確な有病率は不明であるが,睡眠ポリグラフ検査(P

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