てんかんに伴う精神症状は発作間欠期と発作周辺期に大別される.発作周辺期精神症状とは発作と同期して生じるものであり,「発作に直接関連した精神症状」と同義ととらえてよい.発作周辺期症状はさらに発作時と発作後に分けられる.
Ⅰ.発作時精神症状
◆疾患概念
てんかん性「前兆」として精神症状を呈することがあるが,これは発作症状にほかならない.前兆の25%は精神症状であり,その60%が恐怖あるいは不安である.てんかん発作型としては単純部分発作のなかの精神発作に分類される.精神科臨床で問題になる精神発作には発作時恐怖と持続性前兆がある.持続性前兆とは精神発作の重積状態であり,後述する非けいれん性てんかん重積の1つである.
A.発作時恐怖
発作時パニックとも称される発作時恐怖は側頭葉内側面,特に扁桃体がてんかん発作に巻き込まれると生じる.症状はパニック発作に酷似するが,持続は30秒以内であり,パニック発作に比べて極端に短い.恐怖感自体もパニック発作の「死の恐怖」に比べれば軽度であり,救急車出動を要請したりすることはない.また,パニック発作とは異なり,流涎を伴うこともある.発作が複雑部分発作に進展した場合には意識減損や自動症が出現するだろう.治療は前出の単純部分発作に従う(→).
B.非けいれん性てんかん重積
非けいれん性てんかん重積nonconvulsive status epilepticus(NCSE)とは文字通りけいれんを伴わない「見えないてんかん重積」であり,脳波検査を実施しない限り確定診断には至らない.NCSEには精神発作の重積と意識障害を伴う重積がある.後者はさらに欠神発作重積と複雑部分発作重積に分類される.
1.持続性前兆
単純部分発作の重積は持続性部分てんかんepilepsia partialis continuaともよばれるが,精神症状,自律神経症状,感覚症状の発作重積に限っては
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