診療支援
治療

代謝疾患合併症
metabolic complications
高畑圭輔
(慶應義塾大学・精神・神経科学)

 代謝疾患は,物質代謝の異常に基づく疾患をいう.糖質,蛋白質,脂質,核酸,水,電解質,微量元素,ビタミンなどの物質それぞれに対応した代謝異常があり,しばしば精神症状を伴うことがある.代謝疾患によって引き起こされた症状のうち,心理的反応によらないものは症状精神病に含まれ,急性期には疾患によらず,比較的共通した経過を示すことがある.精神症状をきたしうる代謝性疾患は多岐に及ぶが(表1),本項では精神科領域で特に注意すべき事項を取り上げる.また,リフィーディング症候群や,代謝疾患が精神疾患に合併した場合の処方上の注意点についても触れた.

Ⅰ.糖尿病

A.特徴,診断

 糖尿病は,インスリン作用不足による慢性高血糖状態を主徴とし,種々の特徴的な症候を伴う疾患群である.わが国では,700万人以上が糖尿病患者と診断されており,精神科でも日常的に遭遇する疾患である.現在,2010(平成22)年7月に改訂された診断基準が用いられている(表2)〔糖尿病診断基準に関する調査検討委員会「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」糖尿病.2012;55:485-504,表 「糖尿病の診断基準」 を参照〕.

B.精神科薬物療法の注意点

 非定型抗精神病薬の一部(オランザピン,クエチアピン)は,糖尿病患者には禁忌である.また,クロザピンも糖尿病患者には,原則禁忌である.このように,語尾にpineのつく薬剤で糖代謝異常を引き起こすことが多い.重篤な場合は,糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡などが発現するおそれがある.また,上記の2剤以外の抗精神病薬も,糖尿病患者,糖尿病の家族歴や危険因子をもつ患者では,慎重投与が必要である.糖尿病や耐糖能異常のある患者に抗精神病薬を処方する際は,開始前後で血糖値を測定し,処方後も定期的(1か月-半年に1回)に血糖値,HbA1c値,体重などをモニタリングする.

C.食事療法

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