診療支援
治療

向精神薬と運転
psychotropics and driving
岩本邦弘
(名古屋大学大学院講師・精神医学)
尾崎紀夫
(名古屋大学大学院教授・精神医学)

◆向精神薬と運転に関する諸問題

 一部の例外を除いて向精神薬の添付文書では,服用中の運転中止を明記しており,2013(平成25)年5月には,厚生労働省からも周知徹底を求める通達が発表されている.これは,向精神薬が処方されているほぼすべての患者に運転中止を求めることにほかならない.添付文書は必ずしも証左に基づいておらず,海外の同じ薬剤とも記載内容が異なるが,医師の説明責任により無視できるものではなく,判例ではしばしば引用される現実もある.なお抗うつ薬であるセルトラリン,パロキセチン,エスシタロプラムは,服用中の運転への注意喚起にとどまっている.

 さらに,2014(平成26)年5月には,「自動車運転死傷行為処罰法」が施行され,薬物(治療薬も含まれる可能性がある)の影響下,および一定の病気(一部の精神疾患を含む)の影響下にある交通事故が厳罰の対象となることが規定された.この薬物の影響については

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