診療支援
治療

意識障害
disorders of consciousness
小橋孝介
(松戸市立総合医療センター小児科・副部長)

治療のポイント

・意識障害の特異的な治療方法はない.

・評価と鑑別を行い,原因疾患に対しての治療を行う.

・可能な限り治療前の血清,尿,髄液,濾紙血を採取し保存しておく.

・低血糖(≦60mg/dL)を認めた場合すみやかにブドウ糖液の投与を行う.

●病態

・意識とは自身と周囲の状況を明確に認識できる精神状態である.意識障害とは清明度が低下する「意識混濁」と意識の内容が変化する「意識変容」との2つの側面をもつ.

・病態は,意識を維持する脳幹網様体賦活系と視床下部調節系の機能に障害(脳幹網様体とその上行系が障害される場合と大脳皮質が広範に障害される場合がある)をきたすことによる.

・原因疾患は多岐にわたり,①頭蓋内病変に伴うもの(脳血管障害,感染症,脳腫瘍,てんかんなど),②全身疾患に伴うもの(代謝性疾患,内分泌疾患,低酸素性障害,中毒など),③精神疾患に伴うもの(転換性障害,詐病など)に大きく分別される.

・鑑別にあたっては,「AIUEO TIPS」(表1)など網羅的な鑑別方法が有用である.

●治療方針

 意識障害の特異的な治療方法はない.丁寧な評価と鑑別を行い,それぞれの原因疾患に対しての治療を行うことが重要である.

A.初期評価

 バイタルサイン(意識レベル,心拍数,血圧,呼吸回数,体温)の初期評価をまず行う.初期評価において蘇生が必要と判断されればすみやかにPediatric Advanced Life Support(PALS)などのプロトコルに則った蘇生処置にうつる.

 意識状態の評価法として成人で利用されているJapan Coma ScaleやGlasgow Coma Scaleの乳幼児用が開発されており,小児では年齢に合わせてそれらを用いて評価を行う(表2).

 一般身体所見では,全身を丁寧に診察する.子ども虐待も意識障害の重要な鑑別疾患である.乳幼児における意識障害に伴う皮膚所見(出血

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