診療支援
治療

熱中症
heat illness
種市尋宙
(富山大学大学院小児科学・講師)

治療のポイント

・熱中症診療の基本は早急な体温降下と脱水補正に努めることである.

・熱中症の診断は除外診断による部分も多く,鑑別診断を常に念頭におく必要がある.

・深部体温が40℃以上の場合は生命危機ととらえ,現場から継続して迅速な冷却を行うことと,その後の合併症対応をふまえて集中治療室が整備されている施設で管理を行うことが望ましい.

●病態

・熱中症は生死にかかわる重篤な疾患であるが,一方で予防できる疾患でもある.

・日本救急医学会より「熱中症診療ガイドライン2015」が発行されており,「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」と定義されている.これは体内における熱の産出と放散のバランスが崩れて,体温が著しく上昇した状態を示している.

・暑熱環境(高温,高湿度,無風,放射熱),年齢(高齢者,乳幼児),体質(男性,肥満,基礎疾患)などが発症に関与している.

●治療方針

 通常の病態評価に加えて,熱中症を疑っている場合は直腸温を測定し,深部体温を確認する.特に深部体温が40℃以上のときは緊急であることを認識しておく.

 また,下記の症状はそれぞれの重症度に対して必ず起こるものではなく,熱中症は一連のスペクトラムと理解されている.早期に異常を認識し,重症度を意識した早期介入を心がける.

A.熱中症Ⅰ度(現場にて対処可能な状態)

 従来の熱失神,熱けいれんの状態.めまい,立ちくらみ,吐き気,生あくび,大量の発汗,こむら返り(有痛性の筋肉けいれん)がある.意識障害はない.

 この段階の冷却法としては,頭部,腋窩,鼠径部などにアイスバッグ(氷嚢)を使用し,冷却を行うことが基本となる.

 風通しのよい涼しいところか冷房の効いた部屋で安静にし,塩分・糖分を含んだ水分を摂取させることで回復することが多い.Na濃度の高い経口補水液(ORS:oral rehydration solution)が推奨される

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