●病態
・一酸化炭素(CO)は炭化水素の燃焼によって発生する,無色,無味,無臭の気体である.
・火災による煙吸入,暖房器具や給湯器の異常燃焼,あるいは閉所での自動車のアイドリングなどがCO発生の原因となる.成人では自殺企図も多いが,小児ではまれである.
・吸入されたCOはすみやかに血中に拡散し,酸素の240倍の親和性でヘモグロビン(Hb)と結合し,COHbを形成し,Hbの酸素(O2)運搬能を阻害する.またCOHbの酸素解離曲線は左方移動し,末梢組織での酸素の放出が阻害される.さらにCOは末梢組織のミトコンドリアでの好気代謝を阻害する.これらにより,全身の臓器に低酸素症を引き起こす.
・急性中毒後3週間くらいまでに,間歇型中毒(あるいは遅発性脳症)とよばれる二相性の意識障害および神経学的後遺症の発来をみることがある.その頻度は成人では40%程度まで,小児ではそれより少なく5~15%といわれている.
●治療方針
病歴からCO中毒の可能性を推測することが第一である.乳児では,頭痛,めまいなどを訴えられず,不機嫌や哺乳不良といった非特異的な症状を示す点に注意する.同居している成人にCO中毒を疑う場合は,小児についても精査を進める.
A.救急外来での治療の実際
1.身体所見およびミニタリング
まずは100%酸素をリザーバー付きフェイスマスクにより10L/分で投与しながら,モニタリングを開始する.
身体所見では,赤く血色のよい皮膚が特徴である.これはCOHbの赤色光の吸光度が低い,つまり赤色光をよく反射する性質による.一方,経皮的酸素飽和度(SpO2)モニターは,測定に使用される波長660nmの赤色光の吸光度がCOHbとO2Hbではほぼ等しいため,両者を弁別できない.つまりSpO2モニターはCOHb,O2Hbが合算された数値を示すこととなり,実際の酸素飽和度よりも高い数値を示す.最近では投射波長の数