●病態
・哺乳動物による咬傷の内訳は,犬(80~90%),猫(5~10%),げっ歯類(2~3%),人(2~3%)の順である.咬傷の受傷部位は一般的に手が多いが,小児の場合犬咬傷では頭頸部の受傷が多い.
・犬は噛む力が強く,出血多量となり生命に危険を及ぼすことがある.犬咬傷の感染率は5~10%と低いが,猫咬傷は鋭く深い穿通創であることが多く,感染合併率が50%以上と高い.
・人による咬傷では,年長児では拳で殴った際に中手骨・指節骨関節に相手の歯があたり発症するclenched fist injuryに留意する.幼小児の場合,遊びや喧嘩の際に顔面や体幹を受傷することが多いが,虐待の存在を常に念頭におく必要がある.
・起因菌は動物の口腔内常在菌である,Pasteurella(口腔内保有率:犬75%,猫99%と高率)・Staphylococcus・Streptococcus感染が多く,嫌気性菌を含む混合感染が半数を占める.Pasteurella multocidaによる感染は24時間以内の早期に発症することが特徴で,重症化して壊死性筋膜炎に至ることがある.ほかの合併症として,骨髄炎・敗血症・心内膜炎・髄膜炎などの重篤な感染症の報告がある.
●治療方針
大切なことは,①十分な洗浄とデブリードマンを含む局所の創処置を優先する,②適応がある場合に予防的抗菌薬投与を行う,③感染創や全身症状を有する場合は,入院して全身管理および経静脈的に抗菌薬投与を行う,④破傷風予防および狂犬病のリスクを考えることである.
A.創処置
大部分の創は十分な洗浄後に一次縫合可能だが,組織の挫滅や牙による刺入創が深く入り込んでいる場合はデブリードマンを行い,原則縫合せずに開放創とする.洗浄はシリンジに20Gあるいは18Gの静脈留置針の外筒をつけて,圧をかけながら行うことがポイントである.顔面や頸部の創は整容的に一次縫合したほ
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