診療支援
治療

新生児の体温管理
thermoregulation in newborn infants
水島正人
(市立札幌病院新生児内科・部長)

A.新生児の体温調節の特徴

 新生児は環境温の影響を受けやすく,容易に低体温や高体温が引き起こされる.

 体表面から環境への熱喪失には,伝導,対流,輻射,蒸散の4つの経路がある.伝導は皮膚に接しているものへの熱喪失である.対流は皮膚の周りの空気の流れによる熱喪失である.輻射は皮膚に直に接していない環境物との熱交換による熱喪失である.蒸散は皮膚表面からの不感蒸泄による熱喪失である.

 体温維持のためのエネルギー消費が最小となる温度環境を,中性温度環境とよぶ.中性温度環境は出生体重や日齢によって異なっている.

B.新生児の体温管理の実際

1.出生時の体温管理

 児は出生すると胎内よりも大幅に低い環境温度にさらされる.熱喪失を防ぐために分娩室の室温は重要である.分娩室の室温は最低25℃以上とし,出生する児の在胎週数に応じてさらに高くするのが望ましい.出生後すぐに温めたタオルやガーゼで羊水を拭いとる.帝王切開や早産などでは低体温のリスクが高く,ラジアントウォーマーを使用するべきである.

 在胎30週未満の児では,出生後すぐに乾燥処置は行わずポリエチレンバッグに入れるか,ポリエチレンラップで包むことも有効とされている.体表面積に占める割合の大きい頭部を覆うことが重要である.これにより熱喪失だけでなく,経皮的水分喪失も減少させることができる.医原的な高体温を生じないように注意することも必要である.

 予期せぬ院外での分娩の場合,児を乾燥させ乾いたバスタオルなどでくるむよう指示する.一般の救急車での搬送の場合,積極的に児を温めることは難しいが,車内の温度を十分に上げるよう心がける.

2.NICUにおける体温管理

 保育器の器内温設定は,多くの施設ではマニュアルでコントロールしている.体温測定の部位は,腋窩温,直腸温などが用いられ37℃前後を目標体温とする.器内温の初期設定を例としてあげる.

 出生体重800g

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